2011/07/12

数字で見るフィンランド


論ずる前に、ということでフィンランドを数字で多面的に見てみる。


フィンランド概略


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写真/ヘルシンキ中心部のエスプラナディ通り近辺。平日・週末問わずそんなに人は多くない

「フィンランド(フィンランド語の国名:スオミ)はヨーロッパ北部に位置しています。人口は520万人、面積は日本(377,829平方キロ)よりやや小さい338,000平方キロです。首都ヘルシンキと首都圏地域を含む人口は956,800人です。」
フィンランド大使館より抜粋

→面積は日本より少し小さく、人口は北海道の(約552万人/平成22年)より少し少ない。ちなみに東京圏の人口は約1000万人。


税率


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写真/街のアイスクリーム屋さん。2スクープ&コーンで450円ぐらい

税金が高いと言われる北欧の中でもかなり高い部類に入る。ただし、品目によって税率は異なり、安いものであれば5%、嗜好品の側面が強いものには最大の22%程度の消費税が課される。
びっくりしたのは現地に行ってフィンランドの人に聞いた所得税の話だ。カフェでたまたま隣にいたおじさんだったのだが「フィンランドの税金について簡単に言うなら、だいたい所得税50%、消費税22%ってとこかな。でも授業料・医療費無料だし老後の貯金が無くても暮らせるから誰も文句言わないんだよ」とのこと。
むむむ、納得できるような、できないような…。


教育


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写真/ユヴァスキュラ郊外の公園で遊ぶ子どもたち。みんな元気に外で遊んでるのに、めっちゃ白い

フィンランドを語る上でいちばん特徴が出るのが教育だ。ちょっと遅めの7才で小学校入学となるにもかかわらず、OEDC(経済協力開発機構)が2003年度に実施した学習到達度調査で、フィンランドの中学生は世界トップの成績を納めた。しかも、授業時間数は調査に参加した国の中で最も少ない。
授業方式の点で言えば、本気で落ちこぼれを作らない補修講師や授業アシスタントの存在も大きそう。優秀な人材を作る、というより、学習進捗が遅い子供たちに焦点を当て、全体のレベルを底上げするように工夫していることが各国比較で優位に結果が出たせいかもしれない。授業内容においても、答えから式を想像させて記入させる算数の授業に代表されるように、物事の過程を考えさせるやり方が重視されている。これにより、応用力のある子どもが育っているのだろう。


教育における社会保障


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写真/Kela(フィンランドの社会保障庁)が発行する移民向けパンフレット


フィンランド人が子どもから大人になるときや、外国からの移民が最初に税金のありがたみを知るのがFinancial Aid(政府からの経済援助)の存在だ。簡単にまとめると
・原則、フィンランドに住む人が対象(学習を主目的としない居住ビザを持つ人)
・帰化移民、親族のつながりでの滞在、仕事での滞在者も対象
・学費援助として月額最大298ユーロ
・住居補助として月額最大201ユーロ
・ローンとして月額最大300ユーロ(希望者のみ)

フィンランド人およびEU市民なら、学費自体はどこも無料なので、学習に付随する出費に充当されるというのが実際のところだろう。
Financal Aid については、HelsinkiTimesのIn need of aidの記事が詳しかった。
なお、Financial Aid自体をハンドリングする行政機関としてはKelaという機関があり、Financial aid for foreign studentsに詳しく条件が出ている。


GDP/国内総生産


国内総生産(GDP : Gross Domestic Product)とは、一定期間内に国内で産み出された付加価値の総額。ストックに対するフローをあらわす指標であり、経済を総合的に把握する統計である国民経済計算の中の一指標で、GDPの伸び率が経済成長率に値する。Wikipedia参照
[世] 名目GDP(USドル)の推移(1980~2011年)の比較(フィンランド、日本)
単位:10億 USドル

人口がベースとなるため、大国と小国の対比のように見えてしまうが、2国ともここ30年の成長度はほぼ変わらない。両国とも30年で約5倍に成長した。日本は乱高下が激しく、市場が不安定に見えるが、言い換えればフィンランドの数字が小さすぎて安定しているように見えるだけのことだ。

両国の成長率(GDP)
フィンランド        53億ドル(1980年)→260億ドル(2011年)
日本                1071億ドル(1980年)→5821億ドル(2011年)


GDPデフレーター指標


GDPデフレーター =の計算式は名目GDP / 実質GDP。推移がプラスならインフレ、マイナスならデフレ傾向にあると見ることが出来る。
[世] GDPデフレーターの推移(1980~2011年)の比較(フィンランド、日本)
単位:10億 USドル

興味深いのは「日本は90年代半ばから10年以上物価が安くなり続ける現象が続いている」ということ。消費者が安くものを買えるのはいいが、競争が激化し、企業収益が少なくなる分、労働分配される富も少なくなっている。簡単に言うと、売値が安いから企業は儲からず、従業員の給料が上げられない状態が続いている」ということかもしれない。給与が上がらず人口も増えない→消費も増えない→企業による値下げ・購入喚起攻勢→デフレという現状ともとれる。
この富と労働分配の話はここで論ずると長くなるから、また別の機会に掘り下げるとする。

ひとり当たりのGDP


これは国民ひとり当たりが1年間でどれだけの価値創出ができたかを示す指標。人口の多い少ないに左右されず、GDPその国のポテンシャルを適切に測ることができる。
[世] 一人当たりの名目GDP(USドル)の推移(1980~2011年)の比較(フィンランド、日本)
単位:10億 USドル

比較すると、日本もフィンランドも現状はさして変わらない(フィンランド/44,488ドル、日本/42,820ドル、2011年度)。冷涼で年中農業や牧畜ができる土地でないにも関わらず自動車メーカーもなく、家電類の多国籍企業がぼんぼんとたくさんあるわけでもないのに、日本と同じぐらいのGDPとはとはちょっとびっくりした。この図を見てひとつ気がついたのは、今のフィンランドと日本は、「中国vs日本の構図と真逆」であるということだ。

・中国は日本よりGDPが高いが、一人当たりGDPは日本の10分の1以下
・フィンランドのGDPは日本の約20分の1だが、一人当たりGDPは日本とほぼ同額。

中国、日本、フィンランド。どの国の物価も違うし、税率や社会保障も違う。どの国が優れているか一概には言えないが、フィンランド人が生産性の高い国民であることは間違いなさそうだ。

※以上図表データの出典:IMF - World Economic Outlook(2011年4月版より)


いろいろポジティブなことが並びすぎてしまったので、次回か次々回あたりはフィンランドの「失業率」と「長時間労働」について書いてみます。
では、今日はこのへんで~

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