2012/06/19

移民をめぐる価値観と制度

真のフィンランド人党」という政党がある。

反移民、反欧州連合(EU)を掲げる民族主義政党で、2011年の選挙では約2割の得票率を得て、第3党にまで躍進したそうだ。
聞くからに物騒なこの政党をざっと調べてみると

  • 反EU
  • フィンランドの福祉国家路線を支持
  • 北大西洋条約機構に加盟する事に対し反対
  • 大きな政府と富の再分配
  • 移民を厳しく制限

このような理念を持っていることがわかる。
ここで疑問なのは、国粋主義者が多いのか、ある特定の地域からの移民に反対の支持者が多いのかはっきりしないということだ。(僕がまだ詳しく調べきれてないかも知れないが)


この党の支持者のメイン論説は大きく2種類に分かれるのでは?というのが僕の見解だ。

  1. 福祉国家のメリットを、外国人にも手厚く与えるのはフェアじゃない
  2. フィンランドの文化・価値観・雇用に対する予期しない変化を少なくし、自分たちを軋轢から遠ざけたい

実際のところ、どちらが多いのだろう。
そして真のフィンランド人党の支持者のメインはどちらなんだろう。
調べて出てくるのは、後者の論説や記事が多いようだ。

Finland's immigrant ghettos will burn


このニュースによると、フィンランドにおける移民比率は3%。20年前には存在しなかった移民たちの住宅街や店舗がヘルシンキでも頻繁に見られるようになった。外国人の数は1990年の6倍に増え、増加率は世界でもトップクラスに入るとのこと。

ここに出てくる帽子をかぶったおじさんは、「以前にスウェーデンに支配されてしまった過ちを繰り返してしまう恐れがある。このままだと、フィンランドの各都市は移民街に囲まれてしまう」と、インタビューで懸念している。

調べてみると、このおじさんは反イスラム主義で、2008年から投稿してるイスラム教徒移民を非難する記事を削除し、罰金を払うようフィンランド最高裁から判決を受けているようだった。

ひとつ解らなかったのが、インタビュー中に出てくる「burning ghetto」という言葉だ。なんとなーくイメージが沸く言葉だけど、真意がわからなかった。

他にもこんなニュースがあった。

Muslims find refuge in Finland

「4万人のイスラム教徒に対して、1つのモスクと1人の指導者しかいない」


Cemetery for finnish muslims

「イスラム教徒たちは自分たちの墓地を希望しているが、首都圏(ヘルシンキ近郊)の地価が高いため、移民局が土地を用意するに至っていない」

移民との軋轢に関するトピックは、調べていくとすぐイスラム系移民の話に行き着いてしまう。他の視点もあっていいものなのに、なかなか見つからない。
そんな中でやっと、中立的な立場からの記事も見つけた。


How will the rise of Perussuomalaiset (True Finns) affect Finland's image abroad?
http://www.monocle.com/sections/affairs/Magazine-Articles/QA--Lasse-Lihtenin/

雑誌版からの記事を要約すると
この党の躍進が恒久的な足跡を残すことはないだろう。この移民排除運動はどこの国でもよく見られる現象だ。しかしフィンランドが他のヨーロッパ諸国と異なるのは、火炎瓶を投げつけたり、車を燃やしたりする行動が無いことだ。伝統的に、フィンランドでは、多数派も少数派の意見を取り込んで政治の意思決定をしてきた歴史がある。戦後の1940年代にはコミュニストを政権に迎え入れた。1980年代にはフィンランド田園党(Finnish Rural Party)を同様に政権に迎え入れた。こうすることで、過激な政治思想を持つものを融和させてきたから、今回の躍進も大きな心配はないと見ている。

国民性や、芸術の方向性も似ていると言われる日本とフィンランドに関するマイナス記事はまだ見つけていない。やはり、価値観の違いが大きいほど、どこの国でも波風が立ちやすいのだろうか。

基本的に、僕は価値観の違いは「取り込む」方が成長につながると考えている。「際立たせる」を重視し、度を過ぎると序列や排除、最終的には格差につながるのでは、とも考えている。しかし移民問題はそれだけではなく、社会保障を外国人も手厚くして良いのか?という問題も絡むので、一筋縄では行かない。


渡フィンしたら、社会学や多民族性について勉強したいと思っているので、引き続きこのトピックを追いかけていこうと思う。