9月に国中を巻き込んだストにまで発展した政府の賃金カット宣言。日ごとによく解らない矛盾がたくさん出てきて、ますます首相は何がしたいのかわからない感じになってきました。
政府広報によると「フィンランドの国際競争力を高め、それにより輸出・投資・新規雇用を増やす」とのこと。その手段として「労働時間を1日あたり20分増やすか、もしくは休日割増賃金をカットする」ということだそうですが、サッパリ成長に関係ない感じがします。
新規雇用について、賃金をカットすると雇用者がもっと人を雇うかというとそう簡単ではなく、社会保険・労務費をがかさむ新規雇用は避けていま居る従業員に長時間労働させるのが一般的な雇用者心理でしょう。実際に、求人案件数は昨対比1万2000件増加したのに対し、雇用主が「ビジネスの不透明な先行きを懸念して投資したがらない」のを背景に昨対比3万人の失業者増。
http://yle.fi/uutiset/jobless_rate_growing_despite_rise_in_open_positions_-_employers_reluctant_to_hire/8324283
…とか言っているうちに、こんどは政府が提言を撤回、代案を決定事項として広報した模様。日曜割り増し賃金カット&残業カットを撤回、かわりに休日賃金を30%カットするとのこと。日曜はわかるんですが休日の定義って何だろう…?
同時に決定事項で有給休暇の権利を一律6週間まで絞る(3年の時限付き)とのこと。「日曜割増し賃金と残業代カットは低所得労働者に不利な変更となる一方で、ホワイトカラー/管理職にはあまり影響がないものなるところだった。なので、有休短縮のほうがみんなに公平な施策だ」、というロジックだそうです。うーむ。。話のすり替え?
http://www.iltasanomat.fi/kotimaa/art-1443415281513.html
どのニュースを見てもよくわからないのが、緊縮&長時間労働でフィンランドの競争力を高めるという政府の主張。
労働時間が伸びても、技術革新または競合に対して魅力のあるサービスが付加されないと競争力は上がらない(=売り上げは伸びない)訳で、長く働いてお金を増やそうという事と競争力は関係ないでしょう。
(…そういえば若い時に残業でなんでもカバーしようとして、「仕事のやり方を根本的に変えないとこの先も何も変わらないよ」と怒られたの思い出します)
96年~98年にかけて、フィンランドは週30時間/1日6時間労働を実験的に取り入れていたそうで、結果としては成功したようです。こんなことやっていたなんで初めて知りました。
特徴的だったのは新しい勤務形態として「6+6プラン」というものを採択し取り入れていたこと。これは従来の全員一律8時間勤務を廃止し、1日あたり営業時間を長時間化した中で6時間勤務者をシフト勤務で早番と遅番に充てるというしくみ。これにより、家庭の事情で出社・退社時間に融通を求める従業員と、労務費を圧縮したい雇用者のニーズが一致したというものらしいです。
労働時間を短縮して収入も上がっている(90年代にフィンランドの一人当たりGDPは約2倍に増加)ので、無論これは生産性の向上で競争力の強化といえるでしょう。もっと働いて競争アップだ、と言っている昨今の状況と真逆で、ますます、いまの施策が何なのかわからなくなります。
http://dollarsandsense.org/archives/2001/0901mutari.html
1990-2000年代と大きく違うのはNokiaの携帯電話産業が一番順調で、NokiaにGDPの何割かを頼っていた時代だったからというのもあるかもしれません。日本の80年代のように持ってた技術がバッチリ時代に合って敵なしだったので、もしかしたら6時間勤務とは関係なく、自動的に成長を後押ししていたのかもしれません。
追記:
いまの首相はむかしビジネスマンで確かどこかの企業のディレクターだったはずなのに。。なんで経済界全体から総スカンを食らうような決断をしたんでしょうね…
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