いきなり別件なんですけど、以前に書いた移民をめぐる価値観と制度で紹介した情報ソースにロシア国営ニュースRTを参照したソースがあり、バイアスがかかっているので現状をきちんと描けてないことに気が付きました。RT、Sputnik、イランの国営系メディア(あとたまにCNN)は事実を報道してる時と歪曲している時がまちまちなので、参照元として使う時は何通りかの方法で裏取りしたほうがいいと思うようになりました。これは近々訂正します。
さて本題。Helsingin Sanomatの雇用情勢に関する秘密調査がガッカリするような、失笑してしまうような何とも印象深いものだったので共有します。まとめると、件数が増えても質が悪化しているということのようです。
以下、秘密調査の方法と要領。4カ所の職業安定所において3ヶ月間オープンになっている求人案件を集計したところ、その合計は365件。求人者と偽って記者がメール・電話で問い合わせを行い、求人内容を確認し、ある程度話が進んだところで求人企業に本当の身分を明かす、という流れ。
調査の結果、確かに求人は存在し、調査開始からたった3時間で「口頭・メールでの基本事項の合意、面接の調整までできたもの」が6件。内訳はタクシー運転手、清掃作業者、プリンターのインクトナー販売者などなど。こういった募集ポジションは通年募集されており、すぐに埋まらないものとして知られているようです。それらを分類すると4タイプになる模様。
1つ目の分類は就業までにトレーニングが必要なもの。例えば看護師や調理師。調理師の求人は通年豊富にあり、一方で看護師の募集は少ないとのこと(=件数は少ないが1年を通じてある一定数の募集がある)。
分類の2つ目は商品を仕入れて販売する上で、自分でスモールビジネスを立ち上げることが要求されるケース。3分類目は業務委託販売。ヘルシンキが位置するウーシマー県(日本で例えると東京都?)における求人案件の約55%はこの第2・第3に分類される。
起業や委託販売は全員にとっても魅力的な仕事ではないはずなので、就職活動を始めたばかりの人はさぞ面食らうでしょうね。職安の求人案件は、(少なくとも今のところは)自分が投資する時間と機会に見合うリターンが少ないものが多いということのようです。
第4分類は、総じて薄給の仕事。パートタイムや派遣契約、または無期限ではあるもののベースサラリーが低いなど。いくつかの清掃請負起業では1時間あたり10ユーロで清掃員を募集しているとのこと。ある会社では清掃員をパートタイム1000ユーロ/月、フルタイム1600ユーロ/月で募集しており、これらの水準は、フルタイムの賃金で働いても首都圏の平均給与の半分以下となるレベル。パートタイムでは首都圏でギリギリ生活できるライン(1500ユーロ)にさえ届かないとのことで、実際には「最低でも」時給12ユーロ以上ではないと難しいのが現状。1500ユーロで何とかシェアフラットで暮らせて、2000ユーロぐらいからやっと自分の家が借りられる、というのがヘルシンキの相場。
最後に2年間ずっと失業中という女性のコメントが乗っており「ずっと募集があるポジションは、最低生活水準以下の給与のものばかり」だそうです。現在、失業手当を月530ユーロ(税引き後・手取り額)でもらっていて、月給1200ユーロ以上のものがあれば進んで働きたいとのこと(以下、記事内には書いてませんが、失業手当が少なくても、失業者に対しての家賃・その他優遇があるのでそれで何とか暮らせているという意味っぽいです)。こういうのは中央ヨーロッパでよく見られる現象かと思っていました。もうこの感じだと、世界中どこも同じなのかもしれません。
以下動画は、ヘルシンキのどこかの地区で食糧配給を待つ人の列の様子。